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『ブラック・クランズマン』は現代の"ブラックスプロイテーション"

おはようございます。こんにちは。こんばんは。

トリコです。

 

『ブラック・クランズマン』という映画を御存知でしょうか。

『マルコムX』などで有名なスパイク・リー監督作品で、日本では2019年公開されました。2019年の第91回アカデミー賞では脚色賞を受賞しています。

 

今作は、黒人刑事とユダヤ系刑事がKKK(クー・クラックス・クラン)に潜入し捜査する、という内容なのですが、驚くことに実話が基になっています。

 

今作は良くできた娯楽作品ですし、何も知らなくとも十分に楽しめる作品です。

ですが、それと同時にスパイク・リー監督の怒り、メッセージが強く込められた作品であり、今作で描かれているものの歴史を知ることでより多くのメッセージを受け取ることができる筈です。

ということで、この記事では今作の時代背景や歴史について解説していこうと思います。

より深い映画体験の手助けになれば幸いです。

 

 

『ブラック・クランズマン』の概要

2019年公開、128分

原題 : BlacKkKlansman

監督 : スパイク・リー

出演 : ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー

受賞 : 第91回アカデミー賞 脚色賞

filmarks.com

 

黒人刑事のロンとユダヤ系刑事のフリップが2人で1人を演じKKK(クー・クラックス・クラン)に潜入捜査する物語。

人種差別についての作品ですが、比較的軽快なタッチで描かれているため比較的観易い作品だと思います。また、単なるバディーもの、潜入捜査ものとしても高いクオリティーだと思います。

 

KKK(クー・クラックス・クラン)とは

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十字架を燃やす儀式

引用 : The Most Iconic Photographs of All Time - LIFE

KKKは南北戦争(1861-65)後にアメリカで結成された白人至上主義の秘密組織で、団員は"クランズマン"と呼ばれます。

黒人を迫害していることはよく知られていますが、現在ではカトリック、ユダヤ系、イスラーム、同性愛者などへの迫害も行っています。

上の写真のように、白装束、白頭巾を纏い、十字架を燃やす儀式を行うことでも知られています。

 

ラストに流れる実際の映像

2017年、KKKやネオナチが参加した白人至上主義者らと、それに抗議する人々が衝突しました。その際、抗議者たちの集団に白人至上主義者の自動車が突っ込み、ヘザー・ハイヤーさんが亡くなってしまうという痛ましい事件が起きました。

この数時間後、トランプ大統領はこの事件についてどちらの側にも非があるという旨の発言をし、白人至上主義者へ批判を避けた会見を行いました。これには民主党議員だけでなく共和党議員からも非難が集まりました。

 

先ほども述べた通り、この作品は実話がベースになっているのですが、本編ラストで、この一連の出来事を映した実際の映像が流れます。とてもショッキングな映像で、依然として現代に蔓延る人種差別の撤廃への壁はまだまだ高いことを思い知らされます

 

『15時17分、パリ行き』や『アメリカン・スナイパー』などでも採られていたこの手法はあまり好きではないですし、今作のこのラストも賛否両論分かれているようですが、個人的には今作に於いてはこの仕掛けは上手く効いていたんじゃないかなと思います。敢えてコメディ要素を交えながら描かれてきたこの作品のラストで、重く悲しい衝撃的な現実を観客に突きつけることで、よりメッセージ性を高めることに成功しているように感じました。

 

ブラックスプロイテーションとしての側面

今作の会話中には、『黒いジャガー』(1971)、『スーパーフライ』(1972)などの作品名が登場します。これらの作品は"ブラックスプロイテーション"と呼ばれる70年代前半に流行したブラックムービーの先駆けと言われています。

公民権運動などを経て黒人が地位を確立し始めたことで生まれたこのブラックスプロイテーションは、頭の切れる黒人の主人公が悪徳な白人を打倒していくストーリーが描かれているのが特徴で、黒人観客をターゲットとして作られていました。

このブラックスプロイテーションは、70年代半ばで流行は終了するのですが、『ブラック・クランズマン』はこのブラックスプロイテーション作品の流れを踏襲しています。

 

大枠で見れば黒人が白人を倒すプロットで描かれるブラックスプロイテーション。

では、ブラックスプロイテーションは革命的なのか反革命的なのか。

また、『ブラック・クランズマン』は革命的なのか反革命的なのか。

それを読み取れれば、スパイク・リー監督が何故敢えてブラックスプロイテーションの流れを踏襲したのか、自ずと理解できそうです。

(これについてはこちらの記事にとても分かりやすく書かれているため拝借したいと思います。↓)

osakamonaurail.com

 

 

 

ということで、今回は『ブラック・クランズマン』の鑑賞に当たって、理解を助けるための歴史、知識を紹介しました。この作品には現代を生きる我々に解決すべき問題、現状をを投げかけてくれています。少しでも多くの方がこの作品に出会ってほしいと願っています。では。

 

ばい。